【報告】第3回口頭弁論期日が開かれました(2025年5月22日)

 In ニュース

5月22日、若者気候訴訟の第3回口頭弁論期日が名古屋地方裁判所で開かれ、原告2名と弁護団が意見陳述を行いました。
裁判所には前回に引き続き定員を大幅に超える人数の傍聴者が訪れ、抽選が行われました。裁判後の報告会・交流会では、原告や弁護団が当日の裁判の様子や論点を解説したほか、海外を含む各地から訪れた支援者たちと意見を交わしました。報告会の様子は録画でもご覧いただけます(後日掲載)。また、定期的に発行している若者気候訴訟ニュースレターでも、第3回期日の詳しい解説を掲載する予定です。

法廷へと向かう原告たち (撮影:森山拓也/気候ネットワーク)

報告会・交流会では各地から集まった支援者が世代を超え意見を交わした (撮影:森山拓也/気候ネットワーク)

 

以下は、原告2名による法廷での意見陳述の内容の抜粋です。陳述内容の全文は、「文書」のページに掲載しています。

原告:堀之内来夏さん

私は、夏が来るのが怖いです。日本に戻って以来、日本の夏は毎年のように最高気温を更新しています。とりわけ京都の暑さはすさまじく、私が大学に入学した頃よりさらに厳しくなっています。外を少し歩いただけでも倒れそうになります。このような異常な暑さに慣れようとしている事態が異常だと感じます。

生活費を抑えるため、大学1回生・2回生のときはできるだけエアコンや暖房を使わないようにしていました。しかし、2023年の2回生の夏以降はエアコン無しでは過ごせなくなりました。そうしなければ頭痛がして熱中症になると感じますし、集中して論文を書くこともできません。この先、どうなっていくのでしょう。

2年前の夏、愛犬を連れて東京や京都の平等院を訪れたときのことです。家を出た途端、車を降りた瞬間から息を切らしながら歩く犬たちの姿を見て、「熱いアスファルトで肉球が火傷しないだろうか、熱中症にならないだろうか」と心配でたまりませんでした。それ以来、夏の散歩は早朝や日没後に限定するほかなくなりました。

夏は「暑さで安全ではない季節」、冬は「気温が不安定な季節」になり、当たり前のように毎年やってきます。それだけでなく、ますますひどくなっていくことに、強い危機感と恐怖を抱いています。

また、カリフォルニア州に住んでいたとき、干ばつの影響で山火事が頻発しました。近くの高校が被害を受け、生徒たちが私たちの学校に避難してきました。私が住んでいた地域に山火事の煙が押し寄せ、空気は臭く、重くなり、健康を害するレベルでした。こうした大気汚染のせいで、私の高校でも、マーチングバンドの練習や授業が中止になる日もありました。焼けた後の山に入ったことがありますが、真っ黒に焦げた木がたくさん倒れていました。ゾッとする光景でした。2020年に森林火災が発生した時のことです。この火災の近くにあった高速道路を通りかかったとき、目の前が一瞬のうちに煙に包まれ、右側にはオレンジ色の光が木々を燃やしていました。まるで、地獄絵の中にいるようでした。
今年も、ロサンゼルスで山火事が発生しました。日本でも岩手県の大船渡で森林火災が発生したくさんの人が避難しました。それだけでなく、岡山でも、今治でも燃え、宮崎にも広がりました。

この現実を前に、「地球が沸騰時代に突入した」と言われるのも、誇張ではないと実感しています。

気候変動は国境、人種、動植物、自然環境、世代を超えて命や生活に影響を及ぼします。今生きている人は、未来の世代が心地よく生きられる環境を残す責任があります。

小学生の頃に子ども新聞で読んだサンゴの白化現象も、気候変動による気温の上昇が原因で起きるものです。あれから12年以上経った今でも、この気候変動を止めるために削減が足りていないことに言葉を失います。今こそ、排出量を削減し責任を取ってください。

今のままでは、日本の若者、そして世界中の若者が、ますます激甚化する異常気象の中で未来を生きていかなければなりません。それは、あまりにも不公平です。これから生きていく人々、若者の未来を守るために、私たちは今、行動しないといけないのです。

気候変動は「自然災害」ではなく、「人災」です。
私は、日本がこの現実を直視し、火力発電事業者がまず、温室効果ガスの排出を国際水準まで削減することを、心から求めます。

 

原告:仲地賢作さん

私は、大阪市在住でアウトドアメーカーに勤務する会社員で、現在27歳です。休日は、サーフィンやスノーボード、そして旅をすることが多いです。今まで、波や雪を求めてたくさんの土地を訪れ、自然と触れ合ってきました。大阪の都会の真ん中で生活をする自分にとって、海の上、雪の上でアウトドアアクティビティを行うことは精神的なバランスをとるために必要な活動で、そういった意味でそれらのアウトドアアクティビティは私の生活に直結しています。

そうして自然と触れ合っていると、異常な気候による違和感をいくつか感じるようになりました。 近年ニュースなどでよく耳にするようになった「線状降水帯」の多発もその一つです。2024年もたくさんの線状降水帯が発生し、いくつもの水害をもたらしました。昨年9月には、大好きな土地である能登半島も水害に遭いました。私はよくサーフィンをしに訪れていて、能登半島地震が発生した後は復旧作業のために通っています。しかし、地震災害からの復旧途中に水害が発生しました。現場は悲惨以外の何でもありませんでした。地震の復旧の中で能登の方と多く知り合いましたが、その仲間が水害の被害を受けているのを目の当たりにして、言葉になりませんでした。

他にも感じている違和感は、激甚化している台風です。サーフィンを楽しむ私たちにとって、沖合を通過する台風は波を届けてくれる喜ばしい現象だったのですが、2018年に上陸した大型の台風に初めて被害を受け、台風の恐ろしさを知りました。関西空港にタンカーを衝突させた台風で記憶にも残っているのではないでしょうか。当時住んでいた地域では電柱や大木が薙ぎ倒され、風に吹き飛ばされた軽自動車が横たわっていて、停電した町の中で見たその景色はショックでした。

雪についても変化を感じています。今年はたくさんの雪が降り、スノーボードを楽しむことができましたが、それはまれで、近年は、積雪量が少なくなっています。そのため、スノーボードができる期間が短くなり、また大阪から遠くに行かないと楽しめません。

私が生まれる前から世界で地球温暖化が問題となっていたと思いますが、問題は悪化していると感じています。地球温暖化が進むと、アウトドアアクティビティができる機会や場所が減り、いつかはできなくなるのではないかと不安に思います。それだけでなく、自分の生活スタイルや居住地も変えないといけなくなる可能性も感じています。
地球温暖化には、どこで、どの程度の被害をもたらすかの予測することが難しいということが特徴にあると思いますが、実際多くの災害を起こしていて、これからさらに多くなると考えられています。これからの人生において、災害が多くなっていくことを考えると非常に不安です。被告らは私たちの主張や不安を「抽象的な可能性としてしか想定することができないもの」と言いますが、その可能性こそが不安であると私は言いたいです。この不安は間違いなく私の心からの不安です。

最後に、私たちの世代が司法に頼らざるを得ない現状を問題視していただき、CO2排出にまつわる社会的な動きについて「知らない」とばかり言って、責任を取ろうとしない被告らに対して、排出削減を義務付けていただきますよう、改めてここに訴えさせていただきます。

報告会参加者との記念撮影(撮影:森山拓也/気候ネットワーク)

次回の口頭弁論は9月17日

報告会では、意見陳述した原告2名のほかに、弁護団からの解説や、同席した他の原告たちからのコメントが行われました。

次の第4回口頭弁論期日は、2025年9月17日(水)に予定されています。
引き続きの応援のほど、どうぞよろしくお願いします。

Recent Posts